契約を結び実際の業務が始まっても、期日までに品物が納入されなかったり、前払い金が支払われなかったりといったトラブルが発生することがあります。トラブルが起きた場合、品物の納入や代金支払いを待つという手もありますが、それよりも、締結した契約を消滅させ、別の業者と契約し直した方がコストや時間の面で有利になるかもしれません。

このような債務の不履行、契約違反の発生に備えるのが契約の解除条項です。民法は、この契約の解除について色々と定めていますが、重要なのが次の541条となります。

第541条(履行遅滞等による解除権)
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

契約解除については民法で規定されているため、契約書において定めておかなければならないものではありません。しかし、この第541条に書かれているように、債権者が契約の解除をしたい場合には、債務者に対して相当の期間を定めて債務の履行を促す必要があり、その期間に履行がされないときに契約の解除ができることとなります。

債務不履行によって被るかもしれない新たなコストや時間のロスを考慮すれば、できれは催告無しに契約解除ができる方が望ましいと言えるでしょう。そこで契約では、相手方の重大な契約違反や背信的行為、また相手方が事業停止や支払い不能になるなど信用不安の事態に至った場合には、催告することなく(又は、直ちに)契約を解除できる条項を入れておく必要があります。

債権者側にとっては催告無しに契約解除できる範囲が広い方が有利です。しかし、逆に債務者側にとっては、債権者側の一方的な判断で催告無しに契約解除ができるとなると、不安的な地位となり不利だと言えます。したがって、契約書の解除条項について、自分が債務者になった場合を想定してしっかりチェックをしておくことが重要となります。