前回の契約書に関する記事で損害賠償条項について取り上げました。債務者が損害賠償の責任を負うには、債務者に「責めに帰すべき事由」(民法第415条)があることが要件となります。

この「責めに帰すべき事由」(帰責事由)とは、債務者の故意または過失(あるいはこれと同視できる事由)を指すものと解釈されています。

過失とは「一般的に要求される注意を怠ること」とされています。故意に契約に違反する行為を行なった場合であれば損害賠償を免れないとしても、業務内容によっては、一般的に要求される注意を怠らなかったとしても契約に違反する行為を引き起こしてしまうことがあるかもしれません。

例えば、何らかのキャラクターの図案を創作する著作物の場合、著作物には特許のような登録制度がないため、過去に創作されたキャラクター図案をすべて調べ上げることは現実には不可能だと言えるでしょう。この場合、図案創作を請け負う債務者側としては、過去の図案についての一般的に要求される程度の調査を行ったうえで創作したのであれば、もし仮に他の図案に似ていたことが判明し、それによって何らかの損害が発生しても賠償責任は負わず、調査を全く行わないなど一般的に要求される注意を著しく行った場合(重過失)にのみ責任を負う、という条項にする方が良いと思われます。

損害賠償に関する条項について、軽過失の場合は免責にし、「契約に違反し損害を与えた場合には損害の賠償をする。ただし、故意または重過失がない場合にはこの限りではない。」というような内容にすることも検討の価値があるでしょう。