(1)知的資産・知的資産経営とは何か
「独自の技術で高い品質の製品をつくっている」、「業界でも指折りの長い歴史を誇る」、「商品開発力に自信があり、アイデアでは負けない」、「協力会社との緊密なネットワークをもっている」、「地域のみなさんに愛されている」、「人材教育に力を入れていて、優秀なスタッフがそろっている」・・・
自社についてこのような評価をお持ちの事業者さまも多いのではないでしょうか。
知的資産とは、このような従来型の保有資産(現金預金、会社建物など)と異なりバランスシート(貸借対照表)の財務項目では表すことのできない無形の資産であり、企業の競争力や将来性の源となっているものをさしています。
中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)では、この知的資産と知的資産経営についてを次のように定義しています。
知的資産とは「従来のバランスシート上に記載されている資産以外の無形の資産であり、企業における源泉である、人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランドなど)、組織力、経営理念、顧客とのネットワークなど、財務諸表には表れてこない目に見えにくい経営資源の総称」
知的資産経営とは「自社の強み(知的資産)をしっかり把握し、それを活用することで業績の向上に結び付ける経営のこと」
出展:中小企業基盤整備機構発行「事業価値を高める経営レポート作成マニュアル改訂版」
■知的資産と知的財産
特許権や意匠権、商標権などは法的に権利化されたもので知的財産(知的財産権)と呼ばれ、知的資産の一部と捉えることができます。知的財産権も企業の競争力の源泉ではありますが、それだけで企業の強みがつくられているわけではありません。企業の強みを判断するには、知的資産全体を見ていくことが重要になります。
<知的資産と知的財産の関係>
■知的資産の分類
知的資産には技術、ノウハウ、人材、ネットワーク、経営理念などさまざまな要素が含まれていますが、それらを性質や発生原因や管理の可否などによって「人的資産」・「構造資産」・「関係資産」の三つに分類することができます。
人的資産 | 人に帰属する資産(知恵・工夫・経験) その者が会社を離れると同時に失われてしまう (例)従業員それぞれ持っている技や勘、経験など |
構造資産 | 会社に帰属する資産 組織として共有されていて従業員の退職などに影響されない (例)知的財産権(特許権・商標権等)、経営理念、企業文化、資料・データベース、マニュアル・教育訓練制度 |
関係資産 | 対外的な関係に付随する資産
企業の持つ信用力や外部からの評価 |
<出展>
〇知的資産のイメージ図、知的資産と知的財産の関係図
中小企業基盤整備機構発行「事業価値を高める経営レポート作成マニュアル改訂版」
〇参考:中森孝文『改訂2版「無形の強み」の活かし方』(発行:一般社団法人 経済産業調査会、2015年)